SSブログ

G.ベルティーニ/バルセロナ管弦楽団 マーラー交響曲第6番他( L'Auditori de Musica) [2000-2001 in Barcelona]

G.ベルティーニ指揮 バルセロナ管弦楽団 マーラー交響曲第6番他(2001年2月17日(土) L'Auditori de Musica)

 音楽においてスペインは特異な地方だと思う.民族音楽は盛んで,たとえばフラメンコなんていうのが有名だ(バルセロナではあまり見かけないが).歴史上多くの作曲家たちがスペインという,ヨーロッパでは西のはずれのこの地域にあこがれを持っていたのも確かだ.古い時代では,たとえばモーツアルト「フィガロの結婚」,ロッシーニ「セビリアの理髪師」,すこし新しくなればビゼー「カルメン」.もっと新しい時代なら「スペイン奇想曲・スペイン狂詩曲」という曲を色々な作曲家が書いているのだから,言うまでもない.またさらに古い時代,つまり今では古楽として演奏される曲目でも,ここは正に宝庫だと言えよう.先日のコンサートもそうだ.だが,それと比べると,スペインの作曲家はそう多くないような気がする.また演奏についてもそうだ.スペイン人の演奏家をどのくらい知っているだろうか?またスペインのオケの演奏を,例えば我々日本人で聴いたことがある人はどのくらいいるのだろうか.たしかにオペラも Liceu 劇場があって,少なくともヨーロッパではとても有名である.またP.カザルスが活動を始めたところとしても知られている.しかしここのオケは?スペイン国立管弦楽団やカタルーニャ州立バルセロナ管弦楽団の演奏を,CDでも聴いたことがある人がどのくらいあるだろうか.私は名前は聞いたことがあったが,実際に音を聞くのは初めてであった.

 指揮者のG.ベルティーニは,私は名前しか知らないが,日本でも何度も演奏している有名な指揮者だ.確か都響だったと思うが,マーラー・チクルスをやっていたような気がする.そしてこの日の曲目はメインがマーラーの6番.

 そんなことで楽しみにしていった演奏会は,運良く,私がもっとも好きな席を取ることが出来た.最後列の中央である.このホールは天井が高いが,最後列まで行けばそう高いわけではない.そうすると,オケの音の時間差が調整され,同時に鳴りの不均一さがはっきりわかるので,この席は好きである.

 さて,1曲目はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の3番である.ごぞんじの名曲,ソリストはルーマニア出身のA.Tomescu という人.流麗に弾きこなす主部も良かったが,重音を駆使したカデンツァには,本当に感服した.アンコールの(私はよく知らない)無伴奏曲も,本当にブラボーだった.

 そしてメインはマーラー.オケは弦が8型(1st16人から,順に2人ずつ減らして,ベースは8人),管は譜面通りの編成.開演前にステージ上では,1楽章のラッパのソロをずいぶん練習していた.まあ気持ちはわかる.あれは重要だし,例えば5番と比べてもはるかに難しい.始まった.最初の低弦の刻みから,本当に充実したいい音がなるオケだ.指揮者の力量も,その日の演奏が期待できるに違いない,とそのときに確信できた.多少私が思うのとは違う解釈もあったが,それは好みだ.少なくとも文句を付けるようなことではない.多少,ラッパとホルンのソロの音程が気になったが,まあ仕方がないだろう,比較の対象はシカゴ響なのだから.ただ・・・このレベルの演奏であるなら,打楽器のトラのレベルが低かったような気がする.シンバルやグロッケンに少々難があった.仕方がないか,その辺は.それからケチを付けるなら(これはマーラーでは常にあることなのだが)弦を大きい編成にして,金管が吹きまくり,打楽器が叩きまくるのに対し,木管の強音が弱すぎる.特にクラリネットやフルートがぴゅーっと聞こえて欲しいところがあって,譜面を見ればクラリネットのベルアップ,なんて書いてあるのにもかかわらず,聞こえないので物足りない.それから1楽章のトロンボーンの Secco の Tutti に音程が「ない」.良い悪いではなくて「ない」.一緒に演奏するティンパニの音程が「ある」のと比べると,どうも気になる.これはヨーロッパのオケではありがちなことで,仕方がないかも知れないが,楽器の特性から言ってトロンボーンはこの点だけは難しい楽器なのである(詳しく知りたい方には直接ご説明します).

 関係がないが,このオケはフルート,オーボエ,ファゴット,ティンパニの首席奏者が女性であった.フルートは小柄な人.だがそれが音量に関係したとは全く思わない.物足りなく思ったのは全員男性のクラリネットが一番だから.ティンパニは2人だが,その女性がメインの(おそらく皮もしくは模造の皮のヘッド)パートを,もう1人がプラスチックのヘッドの楽器を担当していて,この対比も良かった.ああいうメインのティンパニがあって,よく鳴る弦セクションがさらに良いのかも知れない.

 全体的には,ベルティーニの音楽が十二分に披露され,とても満足出来る演奏会であった.この指揮者も偉い人なんだなぁという感じ.7時から始まったこの日の演奏会は,9時半前に終わったのだが,3楽章が終わったところで帰る人がずいぶん目立った.おそらく食事の約束か何かあるのだろう.演奏が悪くて気に入らなかったのだとは思えなかった.

 全くの余談だが,私がこのマーラーの6番を演奏したのは,今から16年前である.当時は1ドル=260円ほど,今ほどアマチュア・オーケストラがどんどん外国に行くということはない時代であるが,その85年2月,落成したばかりのブダペスト・コングレスホールと,ウィーン楽友協会大ホールで演奏させてもらったのであった.そしてその演奏旅行に続いて仲間だけで少しヨーロッパ観光をした.その行程で初めてここバルセロナに来た.そんなこんなで思い出が重なって,とても楽しい夜だった.

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。