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J.Savall & La Capella Reial (L'Auditri, Barcelona) [2000-2001 in Barcelona]

J.Savall & La Capella Reial (2001年2月14日 L'Auditri, Barcelona)

 ここバルセロナに年末(世紀末)に来て,最初に2つオペラを見たのだが,その後全く音楽に触れる機会がなかった.まあその理由は色々あるのだが,どうも何だか気合いが入らない,というのが正直なところである.建築物としても有名なカタルーニャ音楽堂では,あまりパッとしたコンサートがないし,Liceu 劇場はもうチケット完売.そんなわけで遠ざかっていたのだが,ふとしたことから L'Auditori のパンフレットを目にしたところ, J.Savall という名前を見つけた.古楽ファンならもちろんしっているであろう.Hesperion XX を率いて,古楽界に名をとどろかすスターの1人である.

と偉そうに書いたのだが,実は私自身はずっと長い間よく知らなかった.古楽の世界というのがあることは薄々知っていたのだが,日本では残念ながらあまり紹介されていないと言うべきだろう.だが数年前,リュート&ヴィオラ・ダ・ガンバの奏者として,また自身の楽団 La Brilliante を率いてフランス・ストラスブールを拠点に活躍する音楽家,下山恭正氏との出会いから,この分野に改めて興味を持つこととなった.実際,ラッパ吹きの我々にとっては,18世紀頃までの曲にも重要なものが多い.下山氏に出会った後で探してみてわかったのだが,私はそのときすでに,この J.Savall & Hesperion XX による G.Gabrieli などのイタリアの作曲家のアルバムを持っていて,結構気に入っていたのだった.下山氏によればヨーロッパでは今やオリジナル楽器による古楽のCDは,新しく出されるCDの4割を占めるまでに至っている,というのだが,実際にこのバルセロナのCDショップに行ってみると確かに古楽のジャンルがとても充実していた.そんな経緯があって,すぐに飛びついたこの演奏会であった.

 さて,コンサートの感想の前に,このコンサートホールについて.街の中心・カタルーニャ広場から地下鉄で3駅目とう近さだが,そこには新しく作られた広い道路があり,何だか殺風景なところである.はっきりはわからないが,出来てからそう経っていないものである.2000人は楽に収容できるであろうホール.コンクリート構造に,木造のホールがすっぽり入っているような感じ,ホワイエはコンクリートの打ちっ放しが見えるが,大いに斬新な作りである.内部も白木調の明るいホール.とても音がよく響く.これなら古楽のコンサートでもOKだろう.カタルーニャ州立バルセロナ管弦楽団が本拠にしている.このオケについては17日のコンサートの感想で合わせて述べる.

 この日の編成はヴィオラ・ダ・ガンバ3(音域の違う3種類)ヴィオローネ,コントラバス.ギター2(1人はテオルブと持ち替え)打楽器2,チェンバロ&オルガンが1.歌は声質の違うソプラノが2,コントラテナー(アルト,ちゃんと男性)が2,テノール,バリトン,バス各1であった.曲はオールスペインプログラムで,主に16世紀の音楽.

 もう感想を言いようがない.おお,やってくれるか,という感じ.もちろん Savall 自身がバリバリ弾きまくることもあるのだけれど,それだけではない.ギターのメインの若いお兄ちゃん R.Lislevand は一見「あのねのね」の清水国明みたいだけど,まあとにかく魅せてくれる.彼のソロに対する拍手は絶大.下手にフラメンコなんか見に行かなくても,もう充分スペインを味わえた,という感じ.サイドの X.Diaz との掛け合い,テオルブとのアンサンブルも楽しかったし,コントラバス B.Kjellermyr との掛け合いなんて,完全にあれはジャズのセッションと同じ.それから3人のヴィオラ・ダ・ガンバとヴィオローネの「リュートと近い」と言われる響きの良さも充分楽しめた.打楽器のひげのおじさん P.Estevan は,最初はすこしバランスが悪かったけど,太鼓2種類だけでまあ色々な色を出してくれて,good.もう1人の打楽器 A.Gonzalez-Campa はカスタネットやタップを聞かせてくれて,とても楽しかったし,さらに良かったのは,鈴を振ったとき.ノリってこれだな,という感じの演奏.簡単に見えるけど,あのセンスはすごいと思った.歌はいろいろあって,特にホールが大きすぎるので,最初はすこし古楽の発声には厳しい感じもしたけど,だんだん乗ってきて,アンサンブルもきれいだったし,ソロも楽しめた.とにかく音程が良いというか,響きがきれいだった.ホールのせいでオルガンが聴きにくかったのが残念だけど,聞こえてくるところではなかなか良かったと思う.

 Bravo Service もいたけど,本当にそう言ってやりたい演奏だった.1曲のアンコールの後,ホールを出て自然とにんまりしてしまう自分が楽しかった.

 関係ないが,この国では平日のコンサートは普通夜9時からのようである.街の中心のオペラハウス・リセウは8時半から.まあ8時までがオフィスタイムだから当然か.でも終演が11時半近くで,そのころにはすでに地下鉄は終電後,というのも面白い.ほとんどの人は車で来ているようで,終演に合わせてタクシーが列をなす,ということもなかった.雨が降って,傘を持っていなかった私にはタクシーを捕まえるまでの時間がすこし辛かった.

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