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Horizontal Maestro [自分の生き方]

去る1月20日,イタリアの指揮者 Claudio Abbado (クラウディオ・アバド) 氏が亡くなった。80歳だった。

中学生のとき-もう40年近くも前になる-にクラシック音楽を聴き始めた頃,気鋭の指揮者として大きく取り上げられていたのがアバドだ。カラヤンが帝王の座を手中にする頃,彼は楽壇に出てきた。

精緻なアンサンブルと,「カラヤン節」と言われる強力な個性を前面に出し,オーディオ&ヴィジュアルの技術が向上してくるのと呼応してどんどん出てきたカラヤンに比べて,その後にベルリン・フィルの首席指揮者になったアバドは,むしろ逆の控えめなタイプだった。

就任に際しアバドは,
自分は作曲家の後ろにいる
と述べ,自分の個性を前面に出すことよりも,作曲者に敬意を払い,本来目指すべきものは何なのかについて慎重に考える姿勢を示した。

ときにそれはつまらないとか個性がないという評価を受けることもあったのだが,それでもベルリン・フィルをサイモン・ラトルに渡すまで,音楽界全体を動かすような大きな仕事をした。たとえば、少なくとも日本では際物扱いされていた「ピリオド奏法」をベルリン・フィルという世界最高峰のオーケストラを介して定着させたことを挙げたい。

そんな彼の評伝が挙がっていた。

池田卓夫 Claudio Abbado――類ない「Horizontal Maestro」 intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

これはすごい話である。曰く,上意下達型の指揮者たち・・・トスカニーニ,カラヤン,クライバーと違って,水平方向の人間関係の指揮者だというのである。ちょうどそれは,20世紀が指揮者の時代だと言われていたのに対し,21世紀が演奏者の時代だと言われるようになったのと呼応するようである。

閑話休題。

自分個人はとても悲しい気持ちで一杯なのだが,この文を読んで逆に勇気が出た。自分自身、50年近くなる人生の中で,垂直方向でリーダーをしようとして挫折してきたたくさんの経験と,それを水平方向に切り替えたときの円滑で幸せな思いが,この評伝を通じて思い出されたのだ。

ホリゾンタル・マエストロ,クラウディオ・アバド。

私はあの若い頃のはつらつとした姿を忘れない。そして自分もあんな風にまだまだ成長していきたい。


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