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ヴェルディ 歌劇「仮面舞踏会」 (バルセロナ・リセウ劇場) [2000-2001 in Barcelona]

ヴェルディ 歌劇「仮面舞踏会」 (2000年12月29日(木)バルセロナ・リセウ劇場)

 この日の演目についての感想を書く前に,このオペラ劇場「リセウ」について,昨日の感想記に続いて少し書く.そちらにもかいたが,ここは本当に新しい劇場である.客席や周辺が最新の設備でとても快適なのはもちろんだが,舞台装置なども最新の技術が使われており,廻り舞台や吊りものの仕掛け,奈落からのせり上がりなど,おそらく他のどんな劇場よりもそれは立派なのだろう.前日の「魔笛」もこの日の「仮面舞踏会」もそうした設備を利用した舞台であったと思う.そこで少し気になるのは,このオペラの制作についてである.この日の「仮面舞踏会」は上に挙げた公式ページにも書いてあるが, English National Opera(ENO-London) /Royal Danish Opera (Copenhaguen)との共同製作である.これらのサイトによれば,ロンドンではよく分からないが,コペンハーゲンでは5月に演じられるようだ.これらの劇場にも同じだけの舞台装置を持ち込むのだろうか.その運搬だけでもバカにならないとおもうのだが,新しいものを作るよりは安く上がるのだろう.ソリストははっきりは分からないが,指揮者やオケや合唱は自前だ.

 さてこの日の舞台を見たことは私にとって非常に意義深いものであった.まず演奏について.この日の指揮者はこの劇場のシェフのBertrand de Billyである.まあその劇場がシェフとして契約するのだからその演奏を聴かないことには始まらないだろう.実際,譜面をよく熟知し,完全に歌手や合唱やオケをドライブしていて,その点では大いに気持ちがいい.オケは前日のモーツアルトよりは少し難しいし,また連日「魔笛」をやっていて数日ぶりのこの演目だから,少し粗はあるのだがそれもほんのわずかで,相変わらずの好演と言っても良いだろう.ヴェルディの時代までイタリアではトロンボーン3本はバルブトロンボーン(今はそれを普通のスライドトロンボーンで演奏するため,難曲が多い),そしてその下にテューバではなくてツィンバッソという楽器を使うのが本来であった.この日もツィンバッソを使っていた.かつてプッチーニでそのパートをトロンボーンで吹いた経験がある私としては大いに気になったのだが,この大きな劇場を一杯にすることを意識しているためか「吹きすぎ」の感があり,そこだけはいただけなかった. 座席は前日とちょうど向かいの3階(日本式4階)の一番端だったので,その音を直撃で聞かずに済んだのは,「不幸中の幸い」(とは言い過ぎで,「大きな幸せの中のちょっとの難を免れた」というのが正確な表現)だろう.逆に明らかに「幸せ」だったのは,このオケのコンマスのすごさを聞いたことである.誰がこの日のコンマスかよく分からないので名前を挙げられないのだが(誰か教えてください),四角い顔をした男性.1stのユニゾン,総勢10人(予定は11人だったようだが1人欠席で空席があった)の中で明らかに群を抜いて聞こえてくる.こんなにすごい音のVnがオケに,コンマスにいるのは大変なことだと思った.ちなみにオケは 10-10-8-8-6 という弦の編成.

 そんなわけで前日同様歌手陣について細かい論評をしにくいのだが,Amelia 役の歌唱は良かった.名前を挙げても良いのだが事情により控えることにする.

 この日面白いと思ったのは,思い切りのbooing が何度も出たことだった.最初の booing については別途述べることにするが,1&2幕の休憩の後,指揮者が再入場してきたときにもずいぶんひどい booing が浴びせられた.私の聞いた感じでは演奏レベルはとても高い.確かに私の好みではもっとヴェルディは歯切れの良いリズムが欲しいとは思うのだが,その点ではもたもたしていたとは思う.だが boo というほどではないのではないか.指揮者はその声が聞こえる3階席中央辺りと,こうした挨拶の場としてはずいぶん長い間睨み合い,その間 booing とそれに負けないほどの大きな拍手の応酬が続き,結局指揮者はお辞儀をせずにオケに向き直り,3幕の演奏を始めた.想像するに,シェフということである意味では慣れられ,そうすると必ず悪く言う人が出てくるもので,特にこの日の演奏についての booing ではないように思われたが,どうだろうか.

 もう1人の booing はカーテンコールである男性歌手に向けられた.上に述べたように私自身の意見を詳しく論評することが難しいが,そうした意見があることは十分納得できた.もしここに述べた2つの booing が本当にこの日の演奏に対して向けられたものだとしたら,その客はすごいとはおもう.

 さて,オペラで演奏のことしか述べないのなら,劇場に行く必要はない.もちろん演劇としての要素を見なければならない.昨日同様見にくい席ではあったが,席としては充分だったと思う.そこでこの日の演出.全体に「現代風」の演出(翻案に近い)だが,そういう「演劇的な」演出をするのなら,外見も考えて歌手を選んで欲しい.この演目はGustav Ⅲ世が人妻に横恋慕するという話だが,残念ながら「恋する」に値するような女性が,この日ソロで歌う女性には見あたらなかった.古典的な演出なら,衣装を派手にしてそうしたことを表現することが可能であり,それはそれで良いのだろうと思うが,いくら歌が良くてもドラム缶のような体型で現代風の服を着ているのでは,Gustav Ⅲ世がいかなる物好きでも彼女に「恋する」とは思えない.そうした点では現代風の演出には不満である.

 本当は演出について述べようとするなら 残念ながら「不快である」として終わりにしたいぐらいだ.こうした「現代風」の演出に対してプラハでの感想記に述べたように基本的に好意的な感想を持つ私であっても,この日は「不快」という表現をしたい.詳細については,せっかく私の感想記にお付き合い下さる方に見せるのは忍びないので本当は書きたくないし,私自身の記録としても抹殺したいとすら思う位なのだが,一応別ページにあらましを書くことにする.どうしても見たい方はご覧下さい.ただし非常に不快な内容になるので,どうしてもでなければおやめ下さい.

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