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チャイコフスキー 歌劇「スペードの女王」(Narodni Divadlo) [2000音楽三昧 in Praha]

チャイコフスキー 歌劇「スペードの女王」(2000年12月1日(金),Narodni Divadlo)

 チャイコフスキーはバレエは有名な作品がたくさんあります.「白鳥の湖」「クルミ割り人形」「眠れる森の美女」etc.しかしオペラの作曲家としては有名ではない.多くの有名な作曲家がオペラにも数々の名作を残している中,どちらかというと「失敗した」「縁がなかった」などと評する人もあるほどです.色々事情があって,突然これを見に行くことになりました.

 私も名前しか知らないこの作品ですが,インターネットで日本語で書かれたあらすじを探したところ,ほぼ皆無.私と同様の感想文に少しあらすじをかいてくれたページがあったので,それを持って行きました.

 変な話ですが,まず演奏について.指揮者の F.Preisler は,ジェスチャーがオーバーで,そこまでしなくてもオケはついてくるだろうに,という感じ.まあそれでも,特にひどいと言うことは無かったのですが,ずっと仏頂面で観客の拍手にもにこりともせず,この人,一体なに?というのが正直な感想か.オケは全体的に大いに好演.だから指揮者としては良いんだと思います.

 歌手陣は Herrmann の S.Ljadov, Tomskyの Z. Hlavka, を始め,特に男性陣はこれまで私が観て良いと思った歌手が勢揃い.女性陣はまあもう一つか,と思っていて,突然2幕でおまけに出てくる「ダフニスとクロエ」のChroeが気に入ったのだが,メンバー表を見て大笑い.私のHPではおなじみのM Bauerova でした.まあ総じて一人一人の歌は良い.演技も面白い.合唱は相変わらず上手い.舞台装置は工夫されたもので,小道具なども凝っていて,見せ物としては十分すぎるほどの満足がありました.

 

 さて,ここからが本題.どうしてこの曲が,またオペラ作曲家としてのチャイコフスキーがあまり人気がないかということ.まず1幕.普通のイタリア者などよろしく,歌による会話で,人々の心の動きが出てきて,ロシア語がわからなくても大体のことはわかるのだが,この日の,演奏としては好演だったオケの,まさにチャイコらしいサウンドが,どう見ても歌手のやりとりを邪魔してしまう.それは音量が,というような問題ではない.例えばちょっと合いの手に入るフレーズで,木管がさらっと歌うと,チャイコらしくてとても素敵なのだが,完全に歌を「食って」しまう.だから何を見に来たのかよくわからなくなってしまう.悪く言えば「邪魔」,よく言えば「個性が強すぎ」というところか.残念ながら他のたくさんのオペラに慣れてきた私にとっては,違和感が拭えないまま1幕が終わった.そして2幕.これはパーティのシーンなので,チャイコらしいバレエもあり,華やかでとても楽しい音楽.だが1幕からずっと思ったことは,チャイコフスキーは合唱の使い方があまり上手でないと言うこと.もちろん素敵なハーモニーなのだが,合唱が始まって,しかもこのNarodni ぐらいの充実した合唱だと,もうクドい.3幕.同様に今度はカジノのシーン.やはり華やかさという面ではいいのだが,どうもクドい.最後の演出,3枚のカードの秘密を知って,3枚目に賭けるところから,の悲劇シーンなどは,まさに伝統的なオペラの持って行き方で良かったのですが,トータルで観ると結局,チャイコフスキーらしい音楽は,従来のオペラの枠組みに入れるにはあまりにも重厚すぎるというのが,この日の感想でした.

 

 まあ,演奏は良かったし,違ったタイプのオペラが観られた,という意味でも大きな収穫でした.

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