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E.Viklinsky 「Faidra」 (Statni Opera) [2000音楽三昧 in Praha]

E.Viklinsky 「Faidra」 (2000年11月15日 Statni Opera)

 この演目を知っている,という方があったら是非ご一報を.仲良くしましょう.これは Praha2000 と題する一連の行事の中で,この国立オペラ Statni Opera が行ったコンテストで最優秀とされた作品で,2000年9月20日に世界初演されたものである.オペラに限らず一般にクラシック音楽といわれているものは,昔作られたものを再演することが中心である.もちろんそれは素晴らしいことで,私も愛していることなのだが,私の友人(と言った方が本人は喜ぶだろう)で最近人気の指揮者・藤岡幸夫氏は,その師匠である故・渡邊暁雄氏に


我々クラシックの演奏家は昔の作曲家が作ったもので飯を食わせてもらっている.我々はそれに恩返しをしなくてはならない.出来る恩返しといえば,現代の作曲家の作品を良い作品を取り上げ,当然彼らの収入にもなるようにし,さらに未来の音楽家のために残すことだ.演奏家はこれをしなくてはならない

といわれたそうだ.それを心に命じ,日本人作曲家・吉松 隆氏の作品を積極的に紹介している.もちろん我々聴衆にはそうした義務などあるわけもない.だが歴史の上に立ったクラシック音楽を愛している者としてちょっと考えてみたい.その当時,たとえばモーツァルトがああした曲を作曲したときの状況などを知っていれば,それを楽しむ上で大いに役立つ.そしてその状況と現在を見比べてみると,今はあまりにも貧しい.何が貧しいか,それは作曲というすごい技を世の中があまり大事にしていないということである.もちろん,優秀な作曲家が力を奮う事が出来るジャンル,歌謡曲(という言葉は古いか)や商業ベースの音楽ももちろん立派なものである.しかし,クラシック音楽のスタイル,室内楽,交響管弦楽,オペラ etc ではあまりにも「昔のもの」だけに固執していないか.もちろん作る側にも「芸術とは難解なものだ」として,聴衆の側のことを全く考えない作品が数多く存在してきたことも事実だ.だが最近は作曲家の考えも変わってきたようだ.にもかかわらず,特に日本での現状は,ちょうど太古の昔の動植物の死骸を化石燃料(石油・石炭)として大量に消費し,その結果環境破壊をもたらしている我々の「文明」社会と全く同じなのではないか,という気がする.

 残念ながら,日本では音楽に限らず,文化的な営みの多くの部分においてこのような「過去を消費する」だけになってはいないだろうか.歌舞伎,雅楽といった分野では,近年若手といわれる人たちの中にこうしたことに気づいた人がでてきたようである.他の分野でもこうしたことがなされることを期待したい.

 だが,ヨーロッパの人たちはそうしたことに敏感であるようだ.だからかどうか「定評があるもの」だけではなく「新しいもの,まだ知られていないもの」を積極的に鑑賞して評価していこうという姿勢があるようだ.たとえば,先日の All Rise だって切符は完売,満員の会場は総立ちだ.もちろん作品が良かったと言うことなのだが,それは来てみてから言えることであって,来てみないことには良いも悪いもないのである.もしかしたら,プラハ・チェコというところがそういうところなのかも知れないが.この「Faidra」の5回目の公演になるこの日の Statni Opera も,平土間から2ndバルコニーまではほとんど埋まっていた.こうして人々が劇場・ホールに足を運び,演奏家だけでなく作曲家も育てるのである.こうしたことをかいま見ることが出来たのは,本当に幸せなことだった.

 この作曲者は上にリンクを付けた紹介でも分かるように,ジャズ系のミュージシャンとして世に認められた人である.同時に作曲もたくさんしているようだ.この「Faidra」の音楽を聴いて,なるほどこれなら「最優秀」だろうなと思えるほど,立派なサウンドを聴かせてくれた.確かに,メロディ的には少し難解かも知れない.だが,このOperaの舞台となっている「南方前線航空基地」において,登場人物の嘆きや怒りや悲しみといったことを表すにはまさに相応しいものだった.オケは弦が 10-8-6-5-4 管は 2-2+CorIngle-2+BassCl-2, 3-4-3-1, 打は4人掛かりだと思うが,特別変なものはない.変わったものとしては,電子のキーボードとエレキベースがあった.不可解なサウンドは全くなく,和音は大体11thぐらいまでのようだった.リズム的にも自然なもので,歌,特にレシタティーヴォ的なところののメロディは結構すごかったが,合奏になるところでは耳になじみやすい.

 最高だったのは,ある場面,歌も台詞も何も入らない場面だが,観れば何が起きているかすぐ分かる場面.そのエレキベースがチョッパーでソロでBGM系.なかなか良い.まさに報道番組が映像だけで流れている,という感じ(観ないとわかんないでしょ.ごめんなさい).やってくれるよな,という感じでした.

 指揮者はこのオペラハウスの常任のJ.Mikula が担当,親分の D.Dvorak が総監督・舞台作製,Faidra の J.Sykorova, Feve の J.Svobodova, FilipのV.Sebela,整備士の J.Hruska ら,ほとんど初演時=ベストメンバーが出演.舞台装置の作り方と,基地周辺の混雑を表すための周囲の群衆がうるさくて,前半はソリストの歌が聞こえにくかったが,だんだん感じは分かってきた.なかなか「航空基地」を舞台にするものは少ないから,難しいんだろうが,前奏曲の前に飛行機の轟音,そして最初に幕が開いた瞬間に,なるほどとうなってしまった.びっくり箱系だから詳しくは書かない.だが大問題は,字幕がないことだ.作曲者はチェコ出身のようだが,チェコ語原典のまま上演,は当然としても,英語の字幕を入れてくれよ.Narodni では「ルサルカ」だって「リブシェ」だって「売られた花嫁」だってみんな英語の字幕が入っているぞ.こっちはチェコ語が全然わかんないんだ.だからいまいち筋を追いにくい.あらすじを読んでいるから,流れは大体分かるのだが.飛行士たちが輸送機から降りてきて,前線陣地に集う.各人に缶コーラを配って,プシュッと開けて飲んでる.やっぱりこれは・・・・.

 8時頃休憩になって,プログラムを確認.ここまでが1幕?どうも違うみたいだ.あらすじからすると,2幕の話は終わったようだが.プログラムによると全5幕ということになるらしいが,今は2幕まで?3幕まで?どこで切れ目だったのかなぁ.あれれ,7時開演だが9時頃終演予定,とある.そんなに早いの?まあ,みてみよう・・・・・本当に8時50分頃終演.ステージとしては良かった.音楽の内容も良かった.筋がちょっと追えなかったのは岡山弁では「おえんなぁ」という感じ.もう少し観たいという感じも残ったが,面白いものを観たという爽快感が残った.もしかしたら,これぐらいの長さの方がいいのかも.昔のOperaは悠長すぎるのかも,という言い方も出来るかも知れない.

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