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モーツアルト「Cosi fan tutte」(Stavovske Divadlo) [2000音楽三昧 in Praha]

モーツアルト「Cosi fan tutte」(2000年11月9日(木)Stavovske Divadlo)

 この Stavovske Divadlo は「ドン・ジョヴァンニ」「皇帝ティトの慈悲」をモーツァルト自身が指揮をして初演するなど,ゆかりの劇場であることは広く知られている.また単に古いだけではなくて歴史的にも色々な意味を持った劇場である.現在は国民劇場 Narodni Divadlo の分館として,ステージやオーケストラピットが比較的小さくても上演できるもの(オペラ,演劇,バレエなど)がほとんど毎晩行われている.そんなことから,モーツァルトのオペラも常にそのレパートリーに数多く取り上げられているようである.実際これまでにも,「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」,また夏の「モーツァルト・カンパニー」のシリーズで「ドン・ジョヴァンニ」「皇帝ティトの慈悲」をすでに見た.どうせだから,どんどん見てしまおう,というのがこのところの目論見である.さらにいえば,「魔笛」で述べたように,国立オペラ Statni Opera で同じ演目が行われるので,比較も楽しいだろう,というのがもう一つのねらいである.

 さて,この「Cosi fan tutte」は多くの場合,原語のままの名前で呼ばれるようである.強引に訳せば「女はみんなこうしたもの」という題になるそうだが,それではちょっと下品だというのが理由なのではないか.こういう言い方は無礼だが,初学者が最初にトライすることをよく勧められるのがこの「コシ」であるようだ.どういう理由なのか,前に見たことがあるはずなのだが,全く記憶にないので,そんなことも含めて楽しみに行った.

 あらすじなどは詳しく書いてあるページがあるのでそちらを参照されたい.舞台装置は,有名な Daniel Dvorak の作品らしい.道理で思い切り凝っている.金も掛かっているんだろうなぁという感じ.決して華美であるのではない,ただ装置が凝っているのだ.びっくり箱の趣もあるので詳細は述べないが,Stavovskeの「ドン・ジョヴァンニ」,前に見た「ティト」,そして「魔笛」などに見られるような,舞台装置を思い切り簡素化して行くような方向ではなく,どちらかといえばこってり見せる感じだ.一応,舞台となっているのが18世紀頃のようで,登場人物は「普段人前に出るときはカツラをかぶっている」という状況だ.だが演出は古風騒然としたものではなく,溌剌と生き生きとしたものだった.演目としては,どんどん見せてくれる感じである.モーツァルトらしい,笑える筋書きを余すところなく観ることができ,また単に観ていてもきれいで楽しい,仕掛けもいっぱいある,歌も魅力的.これだけ作品が豊かなら,それを生かすためのアイディアはいくらでも生まれるのだろう.「魔笛」や「ドン・ジョヴァンニ」と比べてどちらが有名かよく分からないが,このプラハでこれまで見比べた感じで言うと,もっとも面白いのはこの「コシ」だ.

 もうさんざん見てきているからなのだろうが,この日の演奏レベルではもう物足りなくなってしまった.合唱団はさすがだ.とにかく Narodni の合唱団は良い.それから歌や台詞のない人たちはバレエ団だろうが,これらの演技も面白い.問題は歌手.「コシ」は男声2重唱,女声2重唱がよく出てくるのだが,1幕の最初3分の1を過ぎた当たりからだんだん乗ってきたようで,うーん,聴き応えがあって,笑える演出で,今日は楽しいものを見せてもらって・・・・と思うことが多かったのだが,少しすると交代で誰かが音程をはずしたり,声が部分的に曇ったり,そういうムラが見えた.またオケもtuttiに飛び出したり,ということが前半にいくつかあった.見ている限りは,指揮者がバタバタし過ぎのようだ.無駄な動きが多く,見間違えたのではないか.この指揮者はよく当たるのだが,満足した試しがない.まあ若い人だし,これからの活躍を期待して,名前を挙げるのはやめておこう.

 この日のソリストで本当に良かったのは,Despina 役の M.Bauerova が一番.Alfonso のJ.Sulzenko はまあまあというところか.他のメンバーも個性があって良いのだが,ムラなく歌ってくれたら良かったと思った.

 「魔笛」ではさんざんこき下ろしたが,このStavovske の「コシ」はオペラを知らない人でも楽しめる.筋書きをちょっと知っているだけで充分だ.「この劇場を見るために」オペラを観る人もあるようだが,そういう人には「魔笛」よりもこの「コシ」の方を絶対に勧める.

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