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P.フルニエ/プラハ響FOK ベルリオーズ「ファウストの劫罰」(Smetana Hall) [2000音楽三昧 in Praha]

パトリック・フルニエ指揮プラハ交響楽団FOK ベルリオーズ「ファウストの劫罰」(2000年11月8日(水) Smetana Hall)

 初めてプラハ交響楽団FOKを生で聴く.日本では,と言うよりもどこでもチェコ・フィルの方が圧倒的に有名だが,こちらも立派なオーケストラだという評判がある.

 この日の指揮者は中堅のP.フルニエという人.フランスを中心にオペラで活躍する人らしい.この曲目をこなすぐらいだし,結構期待して出かけた.

 ちなみに,このベルリオーズの音楽物語「ファウストの劫罰」を聴くのも初めてである.第一部の最後にある「ラコッツイ行進曲」だけはスコアの隅々まで知っているが,それだけだ.まずインターネットでこのあらすじを探す.ゲーテの「ファウスト」を読んで感激したベルリオーズが・・・しかしゲーテのそれをはるかに越えたものを作り出した,というような話である.実際,この「ラコッツイ行進曲」は元々ハンガリーで知られていた曲で,ファウストには何も関係ないのに,強引にそれを演奏する場を作ったぐらいだから,まあ「ベルリオーズのファウスト」と言うべきだろうか.

 その解説書を手にしながら聴く.100人ほどの合唱と3人または4人のソロ歌手.フルオケ.演奏会形式のオペラ,ということで最初は作られたというその名の通り,演奏会形式である.解説書にあった素晴らしい表現を借りるなら,この曲はまさに「多様性」の音楽である.色々なアイディア,色々な曲想が溢れ出ている.「ジャンジャンジャン」と場面転換を挟みながら,話はどんどん進んでいく.どうもベルリオーズの書きたい音楽が溢れまくってしまって,従来の「オペラ」という形に収まらなかったのだろう.音楽を重要視した彼は,舞台のほうをあきらめてしまったのだ.この音楽で舞台をやろうという試みもあるようだが,それはそれで面白いだろう.詳しい曲の解説はそうしたHPをサーチしてください.

 この市民会館スメタナホールでは,前にもNYフィルなどを聴いている.そこに書いたとおり,NYフィルのようなオケには響きすぎだ.だがここを本拠とするオケならどうか,それが楽しみで,一番高いバルコニー席(日本で言うなら2階)を取った.案の定,いい具合でオケのサウンドが聞こえる.一つにはベルリオーズのオーケストレーションが良いのだろう,もう一つは演奏が良いのだろう,随所にブルックナーなどとは違う,オルガンの響きが聞こえた.あれれ,この曲オルガンあったの?でもオルガン演奏席は開いてないよ・・・という感じ.チェコフィルよりももう少しストレートな感じのサウンドか.オケのサウンドとしてはこういうのも嫌いではない.古典的なサウンドの中に随所にベルリオーズの書いた斬新な響きがして,とても楽しい.筋書きが変で,話が長く,飽きると言えば飽きるのだが,男声合唱のサウンドも面白い.N響の定期に単独で出てしまうような某音楽ではない大学の男声合唱団がこの曲の男声合唱版を演じたときの曲目解説にもあったが,ベルリオーズの合唱の使い方もすごい.合唱は最初は少しばらけたサウンドだったが,だんだん合ってきたようだった.オケは・・・

 オケのトータルなサウンドについては素晴らしいと思った.今まで聴いたこともないような素晴らしい音だった.だが細かい点では言いたいことがある.弦楽器は冒頭からとても集中していた.ハンガリーの平原はとても大きく,ゆったりとしていた.弦楽器にこれだけ色が見えたのは,久しぶりだ.チェコフィルも美しかったが,色が微妙に変わったか,というとそうではなかった.指揮者がよかったこともあるのだろう.だが,ラコッツイ行進曲ではバスドラムが一つ落ちた.全体的にバスドラの音色が不揃いで,あんまり上手ではないと言う気がした.木管のソロ,たとえば3部のオーボエやコールアングレなんかもとても美しかった.さらに驚いたのは,別隊で鳴る3部以降のファンファーレ.1階客席後方で演奏していたようだったが,これが完璧だった.普通バンダはおまけなのに,そっちの方が上手かったかも知れない.それに比べるとメインオケでは,ホルン4重奏は,「あ~ぁいいなぁ」と思った次の瞬間に1人でぶっ壊すヤツがいた.トロンボーンは1stの人の音楽性が残念ながら低い.一生懸命楽器を振ってコラールを合わせようとしていたけど,それは日本の高校生がやることよーん.実際,3/4部で女性コーラスとの掛け合いでは何をやっているんだかわからない.このまえのチェコフィルの悲愴と比べると,明らかに見劣りした.

 正直なところ,聴いた経験は大きかったと思う.マーラーなんてのはよく日本でも演奏されるし,アマチュアでもやるが,ベルリオーズは「幻想」をのぞくとあまり演奏しないのではないか.良いものを聴いたと思う.指揮者が良かったこともあって,細部は別として演奏は良かった.ただ,さすがに曲目がこうだからか,1500人近く入るスメタナホールは,1階後部の高い席を中心に空席が目立った.6割強の入りか.舞台がある楽しいオペラがたくさん見られるこの街で,2日連続で行われたこの公演に,3000人の人を呼ぶのは少々難しかったのかも知れない.

 

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