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ビゼー「カルメン」 Statni Opera と Narodni Divadlo を比べて [2000音楽三昧 in Praha]

ビゼー「カルメン」 Statni Opera と Narodni Divadlo を比べて

「カルメン」をプラハで見るのは2回目である.前回は国民劇場 Narodni Divadlo. 人気のある演目だから,競作になることはわかる.こちらとしてはむしろ見比べてみて違いを考える方が面白い.そう思って,前回は「リゴレット」を,前に Statni Opera で見たが Narodni Divadlo のでも見た.そこで述べたように「比較」によって色々と面白いことがわかったので,今回もこれについて述べたいと思う.

 2つの「ドン・ジョヴァンニ」についての賛否両論,2つの「リゴレット」でもそうなのだが,Statni Opera はどちらかと言えば伝統的な演出であり,従来の路線に沿ったオペラ公演であると言えよう.今回の「カルメン」も前ページに書いたとおり,正に知られているとおりの筋をちゃんと追った形になっている.ストーリーは皆さんご存じ,設定されている背景も皆さんご存じ.さらに「スペイン・セヴィリアの」と言えばそれなりのイメージを持っているはず,という前提の下にこの公演は作られている.

 一方,Narodni Divadlo の演出は,そうした前提を仮定せず,登場人物の内面を明らかにして,観客に共感を起こさせることを意図している.

 後から見た Statni Opera の公演を見ながら驚いたのは,妙な話であるが「こういう筋書きだと言うことを Narodni の公演で感じなかったなぁ」ということである.別の言い方をすれば,知識として持っている「筋書き」の知識を必要とするかしないか,という違いである.

 「ドン・ジョヴァンニ」は,Stavovske(Narodni 系)はいわゆる「モダン・スタイル」誤解を恐れずに言えば「翻案物」に近い感じであった.そして「演劇」の要素を前面に出し,我々日本人のような「前提とすべき知識」が薄い観客を対象としている感じである.全くの想像であるが,Narodni 系は人々のそうした変化に対応して新しいOperaのスタイルを目指しているのではないかと思う.演劇を非常に身近な物として感じるこのプラハの町の人にとっては,おそらくこうした新しいスタイルが受け容れられやすいのだろう.それにたいして Statni では従来からの伝統に則ったものを出している.伝統を守ることと新しい物を生み出していくこと.この相反する2つのことを並べて見ることができるこの時期にプラハの街に住んだことは大変幸せだったと思う.

 やはり私個人は,演奏やバレエなどの出来については抜きにしても Narodni 系の新しい形の方が性に合う.

 

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