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ヴェルディ「リゴレット」(Narodni Divadlo) [2000音楽三昧 in Praha]

ヴェルディ「リゴレット」(2000年10月16日(月)Narodni Divadlo)


 8月末に国立オペラでリゴレットをみた.そのときのことを思い出すと,どうもこのオペラは好きになれない.だが,違う演出だとどうなるか,と思って見に行ったのであった.

 今回このリゴレットをみて,また同じ Narodni Divadlo が興行している Stavovke Divadlo の「ドン・ジョヴァンニ」 と夏のシリーズの「ドン・ジョヴァンニ」(感じとしては,Statni Opera 系か?)を比べてみて,重要なことがわかった気がした.それは,Statni Opera (の演出家は,と言うべきか)はどちらかというと伝統的な Opera のスタイルを踏襲して作ろうとしているのではないか.それに対して,Narodni Divadlo は現代的な「演劇」のスタイルでオペラを作っていこうとしているのではないか.

 実際,この「リゴレット」は細部まで丁寧に描いてある.リゴレットが「オレはこんな者で」と自分の運命を嘆く1幕,その娘ジルダを貴族たちが誘拐してマントバーニ公爵に捧げてしまうシーン,モンテローネ侯爵は2幕の終わりで処刑シーンまである.確かに筋書きなどはStatoni で見たときは直前までしっかり勉強していったが,そうした細部の展開はよくわからなかった.何となくぼんやりした描き方.でも歌で魅せる.筋書きは皆さんご存じの通りですよ,そんな感じだった.それに対して今回は,うろ覚えだがまあ知っているからいいと,何もせずに行ったのだが,詳細にわたって筋書きが見えるような舞台である.オペラ界にどっぷり浸かっての演出でなく,この Narodni Divadlo の一つの柱・現代演劇の影響を強く受けているように感じた.

 最初,ステージには中年と思しき男性と,その娘と思しき小さい女の子がでてくる.女の子は舞台の回転木馬でお父さんと遊んでいる.そうしてこのオペラが始まり,回転木馬はそのままステージ(回り舞台になっている)にある.進行中も時々これが使われる.ネタをバラすことになるので詳しくは書かないが,父と娘,を役の外のこの2人が象徴的に演じる.前にこの Narodni で「カルメン」「トスカ」を見たときにも思ったのだが,こうした心理面の描写のために手をかけている.逆に言えばそれだけ直接的に見せてくれるわけで,伝統的なオペラになれた人にはマンガのようだ,と嫌われるかも知れないのだが,今時の人間には合っていると思う.

 「ドン・ジョヴァンニ」も私自身は6月プルミエの版が面白かったのだが,先日Stavoskeに見に行った愚妻はあれでは面白くない,もっと「側」で見せる演出でないと,という.おそらくオペラ通の人=従来型の演出になれている人=はそうした伝統的なものが良いというのであろう.これはもちろん賛否が分かれるところである.関係ないが,近日Stavoske で「魔笛」を見る予定であり,Statni Opera で「カルメン」「魔笛」をやっているので,時間があったらすべて観て比べたいと思う.

 この日の演奏は,歌手陣は総じてハイレベルの粒ぞろいであった.ジルダ役の人は歌は良いが・・・と思ったので,名前を挙げることは差し控えよう.それよりすごかったのは,オケと Oliver Dohnanyi の指揮である.この人は前に Narodni の音楽監督をしていたようだが,すごい人だ.たまたまこの日は気まぐれでサイドのバルコニーボックスから観ていたので,指揮ぶりがよく見えたが,完璧だ.そしてオケのドライブも.指揮に余裕があるのでオケが演奏しやすそうだった.また特に木管陣の演奏が素晴らしい.ヴェルディは甘い愛のメロディにクラリネットを好んで使うが,その部分は各所で本当に感動した.これまで聞いたOperaのなかでは,J.コウト指揮の「トリスタン」と共に,私の心に残る演奏であった.最後に「殺し屋」役の人がカーテンコールでオケピットに拍手していたのだが,本当にその通りだと思った.

 

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