マジャール・ジプシー・オーケストラ(ブダペスト,ブダ・ヴィガトー) [2000 in Budapest]
マジャール・ジプシー・オーケストラ(2000年9月25日 ブダペスト,ブダ・ヴィガトー)
「ヴィガトー vigato」というマジャール(ハンガリー)語の意味をよく知らないが,コンサートホールのようである.ドナウ河によってBudaとPestに別れているこの街に,ブダ・ヴィガトとペシュト・ヴィガトがある.ペシュトの方が有名であり,こちらは普通の大きな宮殿の中にわざわざ特設ステージを作ったようなものだった.でも昔からコンサートホールとして使われていたそうな.
ハンガリーの音楽,ジプシーの音楽.私自身もあんまりよくわかっていなかったのだが,例のNHKの C.デュトワのシリーズで言っていたように,ブラームスやリストが紹介した「ハンガリー音楽」は正確には「ハンガリー周辺のジプシーの音楽」であって,本当のハンガリーの民俗音楽ではなかったのである.この街に来てみてそのことを再確認した.こうした民俗音楽を発掘して世に大きく出したのは,あのバルトークとコダーイであった.
その昔,私が学生だった頃,コダーイ・ゾルターン(この国では姓,名の順でかく)の音楽劇「ハーリ・ヤーノシュ」の組曲をやったことがある.そこにはツィンバロンという楽器が出てくる.これはピアノの中身を取り出して,先端に羽が付いたようなばちで叩いて音を出す,他にない楽器で,ピアノの一つの祖先とも言われている.この街の観光客が集うようなレストランにはよく,ツィンバロン&Vn&Cl+ベースやギターやアコーディオンというようなバンドが,音楽を奏でている.そしてその固まりみたいなものとして,このオーケストラがあるようだった.
その前に,ブダペスト国立歌劇場のショップで,こんな名前のオーケストラのCDを買ってみた.そのジャケットには,ツィンバロン6台とフルの弦楽合奏50人と少しの木管楽器,という写真があった.そんな大きなものではなくて・・・と思いながら行ってみたのだった.
この日の編成はツィンバロン2台,1stVn4, 2ndVn2, Va2, Vc1, DB1, Cl 2. そして前にソリスト兼指揮者のVn.典型的な編成なんだろう.始まった.まあこうしたものは当日の本番の前にリハなんかやるわけはない.毎週同じような出し物で演奏をしているんだし.だから我々より遅く来た奏者もいたぐらいだった.そのことを割り引いても,まあ我々が普通に思っているオーケストラのアンサンブルとは全く違う.まずみんな割合好き勝手に弾く.だから悪く言えばぐちゃぐちゃだ.だが,昼間にどこかのレストランで見たバンドの兄さんも,また大昔ブダペストに行ったときに見た記憶でも,みんな好き勝手に弾く.ギトギトにヴィブラートをかけることやすごいスピードで弾きまくって見せつけてやろうという感じが全員に見える.確かにその通りで,この日はやらなかったが名曲「ツィゴイネルワイゼン」なんてのも,そういう曲だと思えば大いに納得がいく.どこに行ってもそうだが,特にこの日すごかったのは,ツィンバロンの2人である.何しろ速く弾くことを競いまくる.全く手の動きが見えないぐらいだ.目をつぶって聞くと,ピアノのように10本指で弾いているように聞こえる.だが両手に撥を1本ずつ持っているだけだ.まさに神業である.そしてこの日,笑ったのが,ご存じ,モンティ「チャルダッシュ」である.4,5人のバイオリンが,お互いにけしかけ合いながら,速く速く弾くのである.
これを見て思い出したことがある.ある有名なトロンボーン吹きである.彼は自分の弟子たちと4重奏団を組んで世界中を旅行している.そのレパートリーにこの「チャルダッシュ」が入っているのである.私の知っているトロンボーン吹きでも,「あれはすごい」と賞賛し,真似てみようとする人が何人もいた・・・私はトロンボーンでそういうことをするのが嫌いである.ヴァイオリンやピアノ(この場合はツィンバロン?)にかなうわけはないのである.もちろんこのトロンボーン吹きのように対抗してしまうことは,他の人にはまねができないのだからすごいと言うべきなのだが,自分ができないからというだけではなくて,トロンボーンには他にすべきことがあるのではないか,ということである.
さて,演奏はそんなギトギトに速く,と言うようなものだったのだが,もう一つ面白かったのは,ツィンバロンとクラリネットの「アドリブ」のことである.時々彼らがコンマスから指名されてソロを取るのだが,もうこれは完全にジャズの世界と一緒である.何も違いはない.ただリズムのスタイルが「スイング」ではなく「マジャール・ロマ(ジプシー)」というだけのことだ・・・
楽しめた.そしてネタもわかった.だから勉強になった.コダーイもバルトークも,もちろんリストもブラームスも,まあモンティも,こんな風に演奏したら面白い,というヒントを得たコンサートであった.
「ヴィガトー vigato」というマジャール(ハンガリー)語の意味をよく知らないが,コンサートホールのようである.ドナウ河によってBudaとPestに別れているこの街に,ブダ・ヴィガトとペシュト・ヴィガトがある.ペシュトの方が有名であり,こちらは普通の大きな宮殿の中にわざわざ特設ステージを作ったようなものだった.でも昔からコンサートホールとして使われていたそうな.
ハンガリーの音楽,ジプシーの音楽.私自身もあんまりよくわかっていなかったのだが,例のNHKの C.デュトワのシリーズで言っていたように,ブラームスやリストが紹介した「ハンガリー音楽」は正確には「ハンガリー周辺のジプシーの音楽」であって,本当のハンガリーの民俗音楽ではなかったのである.この街に来てみてそのことを再確認した.こうした民俗音楽を発掘して世に大きく出したのは,あのバルトークとコダーイであった.
その昔,私が学生だった頃,コダーイ・ゾルターン(この国では姓,名の順でかく)の音楽劇「ハーリ・ヤーノシュ」の組曲をやったことがある.そこにはツィンバロンという楽器が出てくる.これはピアノの中身を取り出して,先端に羽が付いたようなばちで叩いて音を出す,他にない楽器で,ピアノの一つの祖先とも言われている.この街の観光客が集うようなレストランにはよく,ツィンバロン&Vn&Cl+ベースやギターやアコーディオンというようなバンドが,音楽を奏でている.そしてその固まりみたいなものとして,このオーケストラがあるようだった.
その前に,ブダペスト国立歌劇場のショップで,こんな名前のオーケストラのCDを買ってみた.そのジャケットには,ツィンバロン6台とフルの弦楽合奏50人と少しの木管楽器,という写真があった.そんな大きなものではなくて・・・と思いながら行ってみたのだった.
この日の編成はツィンバロン2台,1stVn4, 2ndVn2, Va2, Vc1, DB1, Cl 2. そして前にソリスト兼指揮者のVn.典型的な編成なんだろう.始まった.まあこうしたものは当日の本番の前にリハなんかやるわけはない.毎週同じような出し物で演奏をしているんだし.だから我々より遅く来た奏者もいたぐらいだった.そのことを割り引いても,まあ我々が普通に思っているオーケストラのアンサンブルとは全く違う.まずみんな割合好き勝手に弾く.だから悪く言えばぐちゃぐちゃだ.だが,昼間にどこかのレストランで見たバンドの兄さんも,また大昔ブダペストに行ったときに見た記憶でも,みんな好き勝手に弾く.ギトギトにヴィブラートをかけることやすごいスピードで弾きまくって見せつけてやろうという感じが全員に見える.確かにその通りで,この日はやらなかったが名曲「ツィゴイネルワイゼン」なんてのも,そういう曲だと思えば大いに納得がいく.どこに行ってもそうだが,特にこの日すごかったのは,ツィンバロンの2人である.何しろ速く弾くことを競いまくる.全く手の動きが見えないぐらいだ.目をつぶって聞くと,ピアノのように10本指で弾いているように聞こえる.だが両手に撥を1本ずつ持っているだけだ.まさに神業である.そしてこの日,笑ったのが,ご存じ,モンティ「チャルダッシュ」である.4,5人のバイオリンが,お互いにけしかけ合いながら,速く速く弾くのである.
これを見て思い出したことがある.ある有名なトロンボーン吹きである.彼は自分の弟子たちと4重奏団を組んで世界中を旅行している.そのレパートリーにこの「チャルダッシュ」が入っているのである.私の知っているトロンボーン吹きでも,「あれはすごい」と賞賛し,真似てみようとする人が何人もいた・・・私はトロンボーンでそういうことをするのが嫌いである.ヴァイオリンやピアノ(この場合はツィンバロン?)にかなうわけはないのである.もちろんこのトロンボーン吹きのように対抗してしまうことは,他の人にはまねができないのだからすごいと言うべきなのだが,自分ができないからというだけではなくて,トロンボーンには他にすべきことがあるのではないか,ということである.
さて,演奏はそんなギトギトに速く,と言うようなものだったのだが,もう一つ面白かったのは,ツィンバロンとクラリネットの「アドリブ」のことである.時々彼らがコンマスから指名されてソロを取るのだが,もうこれは完全にジャズの世界と一緒である.何も違いはない.ただリズムのスタイルが「スイング」ではなく「マジャール・ロマ(ジプシー)」というだけのことだ・・・
楽しめた.そしてネタもわかった.だから勉強になった.コダーイもバルトークも,もちろんリストもブラームスも,まあモンティも,こんな風に演奏したら面白い,というヒントを得たコンサートであった.
2000-09-25 23:31
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