モーツアルト「ドン・ジョヴァンニ」(Stavovske Divadlo)伝統的 [2000音楽三昧 in Praha]
モーツアルト「ドン・ジョヴァンニ」(2000年7月26日(金)Stavovske Divadlo)
ほぼ1ヶ月前にここでこの劇場の新作の「ドン・ジョヴァンニ」をみた.しかし今日はその感想で書いたようにもう一度同じものを見ようと思ってきたわけではない.どちらかといいえ場もう少し不純な動機でこれを見ようと思い立ったのである.
ソプラノ歌手・慶児道代(けいこみちよ)さんは倉敷出身でここプラハを中心に活躍しておられる.岡大で私がお世話になっている,ピアニスト・長岡 功 助教授からも,また倉管の仲間からも是非連絡してみなさいと言われていたのだが,こちらに来てからなかなか連絡を取ることが出来なかった.たまたまこの日夕方,全く違う事情でこの劇場の近くを通り,そのときに彼女の名前を「本日の出演者リスト」に見つけて,いいチャンスだから見てみようということにしたのである.
先月見たのはこの劇場(国民劇場主催)の公演.今回は,The Original Prague Mozart Companly という集団の公演である.別団体とはいっても,今のこの集団の首謀者には国立オペラの頭のメンバーの名前があったりするから,いかがわしい団体ではない.夏の,人々がバカンスに出かけて国民劇場や国立オペラが休みの間に大きな出し物をやって,逆にバカンスでやってくる観光客にこの街を楽しんでもらおう,同時に金儲けもしようということであるから,至極自然な話であっていい話だと思う.おかしいとは決して思わない.この集団は団として15年ほどの歴史を持つそうである.4月に見た「モーツァルトオーケストラ」もこの集団の企画だろうと思う.どちらにせよ,先月のものとは全く別のものである.
このDGは一昨年プルミエだったそうだ.そんな理由から,毎年夏,国民劇場自体がOFFのときにここでやっているようで,今年も15日から8月26日までの連続公演である.今日の演出は,この前のモダンスタイルとは違ってどちらかというとオーソドックス.後で慶児さんに聞いたところでは,「プラハ版」といわれるカットが施してあって,「この版なら大きなアリアが1つカットされているから,エルヴィラも大した役ではないのよ」と言っていたのだが・・・
公演直前に電話を入れてチケットを手配してもらったからではなく,非常に厳しく冷静に見て,1幕の慶児さんのエルヴィラは,ぶっちぎりだった.ずいぶん前の方で聞かせて・見せてもらったのだが,他の人は後半に余力を残すためかどうか,ウォームアップをしっかりしないできて,曇った声.ところが,ヨーロッパ人の中に入り込んだら幾分細めのタイプの声ではあるのだが,彼女の歌はぐっと心に入ってくる.しかも音飛びが多く難しそうなパッセージだが,難なくきれいに歌う.前半にそうした難しいアリアがあるから最初から飛ばしていたのだろう,ということはわかる.私は彼女の歌は好き.何が好きかというと,声がきれいなだけでなく,彼女の歌は子音がきちんと聞こえることだ.だから(イタリア語がわからないから意味はないのだが)彼女の歌詞は聴き取れる.それに比べて他の歌手で,少なくとも1幕の間に私の気に入ったそういうレベルで歌えていた人は見あたらなかった.
2幕は慶児さんの出番は少なく,他の歌手たちがペースを上げてきた.しかし,彼女の歌に匹敵する人は,残り7人の登場人物中2人しかいなかったと思う.ツェルリーナの M.Bauerova, ドンナ・アンナのS.Magaro の2人である.誰を気に入らなかったかはここには書くまい.
演出は普通の感じ.最後は墓場のシーンから幽霊が出てきて,それが最後の「パーティ」になってしまい,最後にDGを連れて行ってしまうという進行.だから「パーティに招待」ではないのだがこれはこれでもおもしろい.慶児さんと話をしていたら,このまえのモダンスタイルの演出は,DGが暗い人柄になっていたけど,もっと明るい方がいい,と言っていた.確かにこの日のDGと比べるとこのまえのは暗かった.少し昔のヨーロッパ的な背景をわかっている人にとっては,今日のDGの方がなじめただろう.だが,今の世の中,特に日本やアメリカなど,暗い世相の中に生きている人にとっては,こうした「悪いヤツだが,かっこいい」みたいなあっけらかんととしたものは空々しくて付いていけないのかもしれない.その辺は好みの問題だ.衣装などが伝統的なものからずいぶん逸脱しているという話だったが,それでも古典を踏まえたもので,奇異な感じはしない.
指揮者は(しまった,名前を控えてくるのを忘れた!)若くてかわいい感じの人だったが,着実な指揮振りはとてもいいと思った.後で聞いて見ると「第2」指揮者なのだが評判はいいそうだ.
慶児さんから,プラハの音楽界のこと,オペラ制作の裏側のことなど少し聴かせてもらう時間がすこしだけあったのだが,それは私一人の糧にすることにして皆さんには教えてあげません.はっきりいって,もっと色々教えて欲しかったので,そういう話が聞けたらまた改めて.
今日もはっきり言えることがあります.とってもおもしろかった.見に来て良かった.そしてオペラなんて(見る側からすれば)おもしろけりゃあいいんだということです.
ほぼ1ヶ月前にここでこの劇場の新作の「ドン・ジョヴァンニ」をみた.しかし今日はその感想で書いたようにもう一度同じものを見ようと思ってきたわけではない.どちらかといいえ場もう少し不純な動機でこれを見ようと思い立ったのである.
ソプラノ歌手・慶児道代(けいこみちよ)さんは倉敷出身でここプラハを中心に活躍しておられる.岡大で私がお世話になっている,ピアニスト・長岡 功 助教授からも,また倉管の仲間からも是非連絡してみなさいと言われていたのだが,こちらに来てからなかなか連絡を取ることが出来なかった.たまたまこの日夕方,全く違う事情でこの劇場の近くを通り,そのときに彼女の名前を「本日の出演者リスト」に見つけて,いいチャンスだから見てみようということにしたのである.
先月見たのはこの劇場(国民劇場主催)の公演.今回は,The Original Prague Mozart Companly という集団の公演である.別団体とはいっても,今のこの集団の首謀者には国立オペラの頭のメンバーの名前があったりするから,いかがわしい団体ではない.夏の,人々がバカンスに出かけて国民劇場や国立オペラが休みの間に大きな出し物をやって,逆にバカンスでやってくる観光客にこの街を楽しんでもらおう,同時に金儲けもしようということであるから,至極自然な話であっていい話だと思う.おかしいとは決して思わない.この集団は団として15年ほどの歴史を持つそうである.4月に見た「モーツァルトオーケストラ」もこの集団の企画だろうと思う.どちらにせよ,先月のものとは全く別のものである.
このDGは一昨年プルミエだったそうだ.そんな理由から,毎年夏,国民劇場自体がOFFのときにここでやっているようで,今年も15日から8月26日までの連続公演である.今日の演出は,この前のモダンスタイルとは違ってどちらかというとオーソドックス.後で慶児さんに聞いたところでは,「プラハ版」といわれるカットが施してあって,「この版なら大きなアリアが1つカットされているから,エルヴィラも大した役ではないのよ」と言っていたのだが・・・
公演直前に電話を入れてチケットを手配してもらったからではなく,非常に厳しく冷静に見て,1幕の慶児さんのエルヴィラは,ぶっちぎりだった.ずいぶん前の方で聞かせて・見せてもらったのだが,他の人は後半に余力を残すためかどうか,ウォームアップをしっかりしないできて,曇った声.ところが,ヨーロッパ人の中に入り込んだら幾分細めのタイプの声ではあるのだが,彼女の歌はぐっと心に入ってくる.しかも音飛びが多く難しそうなパッセージだが,難なくきれいに歌う.前半にそうした難しいアリアがあるから最初から飛ばしていたのだろう,ということはわかる.私は彼女の歌は好き.何が好きかというと,声がきれいなだけでなく,彼女の歌は子音がきちんと聞こえることだ.だから(イタリア語がわからないから意味はないのだが)彼女の歌詞は聴き取れる.それに比べて他の歌手で,少なくとも1幕の間に私の気に入ったそういうレベルで歌えていた人は見あたらなかった.
2幕は慶児さんの出番は少なく,他の歌手たちがペースを上げてきた.しかし,彼女の歌に匹敵する人は,残り7人の登場人物中2人しかいなかったと思う.ツェルリーナの M.Bauerova, ドンナ・アンナのS.Magaro の2人である.誰を気に入らなかったかはここには書くまい.
演出は普通の感じ.最後は墓場のシーンから幽霊が出てきて,それが最後の「パーティ」になってしまい,最後にDGを連れて行ってしまうという進行.だから「パーティに招待」ではないのだがこれはこれでもおもしろい.慶児さんと話をしていたら,このまえのモダンスタイルの演出は,DGが暗い人柄になっていたけど,もっと明るい方がいい,と言っていた.確かにこの日のDGと比べるとこのまえのは暗かった.少し昔のヨーロッパ的な背景をわかっている人にとっては,今日のDGの方がなじめただろう.だが,今の世の中,特に日本やアメリカなど,暗い世相の中に生きている人にとっては,こうした「悪いヤツだが,かっこいい」みたいなあっけらかんととしたものは空々しくて付いていけないのかもしれない.その辺は好みの問題だ.衣装などが伝統的なものからずいぶん逸脱しているという話だったが,それでも古典を踏まえたもので,奇異な感じはしない.
指揮者は(しまった,名前を控えてくるのを忘れた!)若くてかわいい感じの人だったが,着実な指揮振りはとてもいいと思った.後で聞いて見ると「第2」指揮者なのだが評判はいいそうだ.
慶児さんから,プラハの音楽界のこと,オペラ制作の裏側のことなど少し聴かせてもらう時間がすこしだけあったのだが,それは私一人の糧にすることにして皆さんには教えてあげません.はっきりいって,もっと色々教えて欲しかったので,そういう話が聞けたらまた改めて.
今日もはっきり言えることがあります.とってもおもしろかった.見に来て良かった.そしてオペラなんて(見る側からすれば)おもしろけりゃあいいんだということです.
2000-07-26 23:30
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