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複雑な気持ち [教育について]

この時期,我が方の学生は教員採用試験に向けて準備をしている。

私の研究室では3年の初めから卒業研究を行う代わりにこの時期は研究をお休みし,教員採用試験向けのゼミに切り替えている。

最初は私がガイドするのだが,すぐに私の手を離れて議論ができるようになる。

先日久しぶりにこのゼミに顔を出したのだが、まじめに一生懸命やっている学生たちがかわいそうになってしまった。

いくつか議論が進まなくなってしまった内容があるのだという。それが

 ・ 学校週5日制と学習内容の3割削減
 ・ 総合的な学習の時間

など,最近のトピックについて,その理念が実現できていないのではないかという疑問だ。

まじめな彼女たちは,いろいろな文献を探し,文部科学省の通達や学習指導要領を読み,自分たちが経験してきた学校現場の例を挙げ,多方面から議論してみたが,この問題点について話が進まなくなってしまったのだという。

それはそうだろう。

そもそも週5日制は教育的な理由から出てきた制度ではない。大企業はともかく,中小企業ではなかなか週休2日制が定着しないことを見た旧労働省などが,子どもの学校を休みにすればそれが波及するからという理由で持ち出したものだからだ。

教員に週休2日を導入するのは簡単だ。日曜以外に教員ごとに一日休みを決めればいいだけだ。学校そのものを休みにする必要はない。トータルで教員数が余計に必要になるからしないのであって,教育の充実には真っ向から反する制度だ。だから安直に内容の3割削減を言い出した。重複した部分をそぎ落とす「スリム化」やメインストリームでないところを削った「精選化」という言葉はとても聞こえがいいが,その結果前よりも多くの生徒が落ちこぼれている。

顕著なのは英語。中学校1年の1学期ですでに英語で落ちこぼれている生徒がたくさんいるという現実をどう捉えているのだろう。「会話から入る」教科書を週に3時間しかやらなくて,どうやって身につけるのだろう。そのくせ,外国に倣って小学校から始めることになってしまった。

このポリシーのなさ。小学校段階の分が無駄になり,中学校段階の英語も無駄になっている。この現実を我が方の学生たちは理解できずに悩んでいる。

問題点は教育政策のまずさだ。

総合的な学習についても然り。理念は悪くない。戦後すぐにはずいぶん取り上げられた形態だ。しかし残念なことにこの教育をするには教員の力量が要求される。最近はどこでもあまりうまく行っていないということを聞くが,結局現実を見ずに理念だけを追いかけるという無謀な施策のせいだ。

純粋に理念を信じてがんばっている学生を前にして複雑な気持ちになったが,どちらも5分ほど解説したところ,ひどくショックを受けていた。

かわいそうな若者たち。
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