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見なきゃ良かった [算数・数学教育について]

近隣の某大学に非常勤講師としてもう何年も教えに行っている。

非常勤だし,あんまり厳しくしたり,手取り足取りしたりするのも面倒なので,講義を一生懸命やるだけにして,試験は楽勝試験になるように心がけてきた。

出席も取らない。

中間に小テスト1回。期末の直前に総合演習1回。それを加味することで成績をつける。
試験も,教科書の問題をあまりいじらずに出す。

そんなことを何年もやってきたので,学生の側には代々そういう情報が流れているのだろう。まず履修登録者数の3分の1しか講義に来ない。

でも別にそれでこちらは損をしないわけだし,わざわざ生活指導をするのも面倒だ。まあ授業中に菓子を食ったりジュースを飲んでるバカがいると怒鳴り挙げるが。

今年も例年通りに講義を進め,また期末試験の前に総合演習を行ったのだが,その答案を見ていてうっかり気付いてしまったことがある。

証明のような問題は,教科書通りだと思って丸暗記してきているのではないか?
計算がどういう順で進んでいるか,理解せずに覚えてきているのではないか?
そもそも,記号や言葉の定義を本当に理解しているのだろうか。

そこで,期末試験では,総合演習と問題の程度を変えず,ただ理解しているかどうかを判定するために,数値や問い方を変えてみた。

すると案の定,予想的中。

関数 f と g に対して,(f g)’=f ・g' という式を平気で書いている。そうそう,総合演習のときには教科書と同じ問題だから f は定数だったからね。でも今度は関数だと断ってあるよ。だから証明しなさいと言っている式が成り立たなくなっちゃうヤツ続出。

「P=Sを証明しなさい」という問題で,一応 P=Q=R=S と,嘘でない等式が書かれているけれど,Q=R の部分は暗算じゃ無理。定義から P=Q と R=S がすぐにわかるから,とりあえずその式を書いて中をつないで,嘘でない式に仕上げただけの答案多数。

あのう,発散ってベクトル値関数にしか定義できないんですけれど。ラプラシアンは基本的にはスカラ値関数にしか定義できないんですけれど。

講義に来てこちらの説明につきあってないと,こういうのは出来るようにならない。おそらく高校までそんな数学を習ってないだろうし。この前,よその県の国立大教育学部の先生に聞いたけれど,何段も論理を重ねて行くような問題って,全く授業できない教師がたくさんいるそうだ。いやいや,その県だけかもしれないけれど。

あんまり頭に来て,イライラしながらやってたので,なかなか進まなかった。来年の講義には反映させなくちゃ。そのためにもまずは今年期末試験通りの成績をつけることかな。それからこの様子を備忘録として,教科書に赤字でガンガン書き込んでおいた。

見ないで知らん顔してれば済んだんだけれど,見てしまったので仕方がない。やるしかない。自分は非常勤だが,彼らが世の中で評価されるような人間になってくれなくては困るし,彼ら自身も困るはずだ。

暗記で済ませようという発想は一刻も早くやめるべき。だって暗記で済むことなんて,その本を持ってくればいい。iPad を持ち歩けばすぐに検索できる。ということは,自分の価値は数万円で買える機械だとか数千円で買える本以下だと言っているようなもの。

この道に突っ込んでいくことは本当に面倒だが,やらなくてはならないのだろうな。現状のひどさを見てしまっては。

http://takuya-sobukawa.blog.so-net.ne.jp/2011-01-29 に書いたことも然り。
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