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高校無償化について [社会の問題について]

おかげさまでこの記事が300件目になる。なかなか滞りがちな更新であるが,出来るペースで続けていきたいと思う。その記念になる記事を書きたかったのだが,構えている場合ではないようだ。

昨晩,News Zero(日本テレビ系列) を見ていて驚いてしまった。高校無償化の問題を取り上げ,その是非を問うという話であった。優しそうで,人格者と呼び声の高い村尾キャスターの挙げる「疑問」には,デスクが書いたシナリオなのか局の方針なのかわからないけれど,ショックだった。その「疑問」とは

1.なぜ私立高校の生徒に援助をするのか。公立にいける成績だがさらに良い教育を求めて私立に行く生徒まで優遇するのか。義務教育段階で私立に通う子どもには援助はないはず。
2.中卒で仕事をしている人と比べると不公平ではないか?

だったと思う。

そもそも,公立の高校がとても少ないのだ。実質的な高校全入状態でありながら,都市部を中心にその多くは私立に通う。その現状を踏まえれば,私学だからダメというのは実態を見ていない机上の議論だ。


中卒で働く人がいるというのも確かにあるが,実際には中卒・高校中退ではほとんど仕事がない。それは昨今の不況のせいばかりではなく,長いことそういう状況だったのだ。ただしある程度景気が良い頃はそれでも人が欲しかったので彼ら・彼女らにも職はあったのだが,この不況で現実が見えてきただけなのである。

関連してちょっとtwitterを見てたら,「高校は高等教育なんだから,そこにお金を出す必要はない」なんていう頓珍漢もいた。あの~今の高等学校は名前は「高等」でも中等教育なんですけど。ちなみにその頓珍漢は厚生労働省の医系の技官だそうだ。昔から医系の技官はろくでもないという話だったが,本当にその通りだと思ってしまう。少なくともこの人の場合は。

制度だけでなく,実際の学力レベルから言っても決して高校は高等教育ではない。最低限必要な段階だと社会は言っているのだ。言い方を変えれば,一昨日書いた「完結教育」を,高校段階で何とかしたいというのが現実である。

「敢えてたくさんお金を出してまで私立でよりよい教育を受けようとする人」という。そこに補助を出す気になれないのはわかる。子ども手当に親の所得制限をつけろというのも同じだ。だがここだけははっきり言っておく。形式的には「お金を補助する」だが,社会全体で次世代を育てていこうという発想なのである。国の財政が厳しいからといいながら,それじゃあどの学校に出してどこに出さない,この親は収入が多いから出さない,という審査をするための公務員を雇うぐらいなら,それを雇うのをやめて一律に出してしまえ,というのが子ども手当であり高校無償化であり,その行き着く先はベーシックインカム制度でもある。

少なくともこのレベルで紛糾している先進国はない。日本は残念ながら内戦の止まない途上国と同じ,数少ないケースである。

こういう目の前だけしか見ない議論をマスコミがやっていることに驚いたとともに,読みかけにしていたこの本をあわてて全部読んだ。

ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書 809)

ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書 809)

  • 作者: 青砥 恭
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/10
  • メディア: 新書



実は,読み始めて,悲しくなって途中で放り出して,それでも現実を見なくてはいけないと思い直してまた読んで,また放り出して,ということを繰り返した本である。

ごく少しの例を誇張して書いているわけではないと思う。実際,都会の中学生を見ていると,そういう状況になっているということが良く理解できる。岡山で同書に上がっているほど直接的なケースを見たわけではないが,4,5歩進むと同じ状況になるであろう想像がつくケースは都会で良く見聞きする。

苅谷剛彦氏のこの本が出たのは2001年であった。

階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ

階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ

  • 作者: 苅谷 剛彦
  • 出版社/メーカー: 有信堂高文社
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 単行本


この本では高収入→子どもの高学歴→子どもも高収入という連鎖についてははっきり述べられていた。その裏返しが貧困の連鎖である。とりあえず書きやすいので「お金の話」だけで述べたが,「意欲」というもっと重要な問題がある。

子どもたちを社会でしっかり育てていく。最低限のところは社会の責任として育てていく。
ある年齢から社会の荒波に揉まれながら自分の力で生きていかれるように。
もちろんそれには社会におけるセーフティネットが必要である。

そういう風に社会を作り替えて行かなくてはならない。社会主義だといって反対する人たちがいるが,自社55年体制は実質的に社会主義の体制に近かったわけで,決しておかしなことではない。そんな,わけのわからない「イデオロギー論争大好き野郎」は早く退場してもらいたい。

とにかく現状をみて一日も早く手を打たないと,大変なことになる。いや,すでになっている。

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