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とても腹が立つこと2題・その2 [教育について]

昨日に続いて,今日は後半戦。実は昨日の分は書かずにいるつもりだったのだが,この本を読んでどうしても書かざるを得なくなり,それならついでに2つ書いてしまえということで,この2編となった。

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)

  • 作者: 河本敏浩
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 新書

その1と同様なので,先に言ってしまう。この本の著者はまた,受験界で有名な東進ハイスクールの名物講師である。だが,あまりにもその指摘は当を得ており,その提言はすばらしい。

まず「近頃の大学生は出来が悪くなった」について,少子化にも関わらず学生定員削減をしないのだから当然であると本書は喝破する。それはそうだ。昔は決して入ってくるはずの無かった学力層が大学に入学してくるのだ。旧帝大などは別にして,我が岡山大でも当然予想されることである。だからそれを嘆くなどもってのほかだという。

100%同意するわけにはいかない。学力はともかく,質の変化は強く感じる。だが,それはそれにあわせて教育をすべきであって,単に入学生や,高校以下の学校のせいにするのは当たっていないとは思う。

そのために,大学の学生入学枠を絞ればいいか?というとそういうわけには行かないのだ。もちろんこの手の話はすべて文部科学省がくだらない枠をはめてくることもあるのだが,第一そんなことをしてしまったら我が国の国力が縮小してしまうだろう。

本書はその後,さまざまな例を挙げて「学力低下論」「ゆとり教育批判」を批判している。例の「分数が出来ない大学生」などはボロカスだ。私も完全に河本氏に軍配を上げる。


新版 分数ができない大学生

新版 分数ができない大学生

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2010/03/12
  • メディア: 文庫

しかし最後に呆れてしまった,ではない,強く感心してしまったのは,教育改革についての提言である。その矛先はまず大学に向かう。

1.大学へのアクセス(入学)に関する敷居を下げるべきだ。入学試験などで選抜しない。学費を取るなどもってのほか。
2.どんどん入ってくる学生を大学初年段階で厳しく教育し,その段階で選抜せよ。
3.AO入試をやるなら,例えば東北大がやっているように,本気で気合いを入れてやれ

どれも大賛成だ。しかしその矛先が義務教育に向いてくると,話は感心どころか驚きとなる。

4.高校は学費をすべて公費負担とし,実質義務化せよ。
5.義務教育終了(中2程度?)の認定試験をやれ。複数回の受験機会を設け,中3ぐらいから高3までの間に合格することを,高校入学ではなく,高校卒業の条件とせよ。

現在の中学レベルの学習内容が本当に全国民に浸透しているなら,確かに国として大きな力になる。これを条件とした上で,高校のカリキュラムの自由度を上げておけば,そこで職業教育などを自由に出来る。大学に職業教育を義務化するなどという低俗な指定をするよりもはるかに効率が上がる。

他にもいくつか提言があってそれはおもしろいのだが,とにかくこういうダイナミックな発想が出来ないのなら,政権交代などしても大した意味はない。役人に任せてもダメ。既得権益を守ろうとする組合もダメ。その点で,「しまった,やられた」という気持ちでいっぱいである。

最後に繰り返して言う。「受験産業」を侮る無かれ。確かにひどいヤツも多いと思う。しかし本当にちゃんとした人はこんな立派な考えを持っているのだ。そして翻って,自らのふがいなさに大いに腹が立つ。




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タグ:教育改革
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