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Mozart 歌劇「Don Giovanni」 2000年6月プルミエ版について [2000音楽三昧 in Praha]

Mozart 歌劇「Don Giovanni」

プラハ・エステート劇場(Stavovske Divadlo)2000年6月プルミエ版について


 この新演出について,「奇をてらったもの」という評もあるかも知れないが,私は本来あるべきモーツアルトのオペラの姿だとおもい,大変気に入った.そしてこの演出によるシリーズが長く続くことを祈っている.長く続くためには,お客さんがたくさん入ってくれなくてはならない.日本人でも,観光の折りにこの劇場に来られる方もあるだろう.そうした方が一人でも多い方がいいのである.従って,この演出の面白いところ,びっくりさせる仕掛け,奇抜なところなどについては本当ならば公開したくない.面白いぞ,面白いぞ,とだけ言っておいた方がいい.しかし絶対にプラハに見に行かないと決まっている人もあるのである.だからこうした鍵のかかったページにおいておくことにする.
 パスワードを知ってこれを読んでくださっている皆さんも,私のその気持ちについては是非お酌み取りいただきたい.

(と、当時は書いたが、もう13年も経っての再公開なので、誰でも見られるこのサイトにおく。2013.10.12)

 舞台は(はっきりと表現していないが)現在のパリまたはミラノまたはNYである.原作のスペインの,なんてのはもうどこにもない.ドン・ジョバンニ は今をときめく,世界でももっとも有名なデザイナーである.彼のファッションショーからは始まる.T字型の舞台の後ろには,サングラスをかけたドン・ジョバンニの大きな顔写真.そしてたくさんのお客さんの観る中,黒のスーツに長いコート,サングラスにバンダナという出で立ちでドン・ジョバンニが登場する.人々は彼に花を贈り,握手を求め,サインを求める.騎手長などという野暮ったいものではなく,そのファッションショーにも来ていたところからすると,アンナの父は大富豪といったところだろうか.そしてドン・ジョバンニはその父をピストルで撃ち殺してしまう.そしてドン・ジョバンニとレポレロは,車(前の部分しか見えなかったので最新のVWビートルに見えたが,ポルシェだったかも)にのって立ち去る.ドン・ジョバンニがエルヴィラと再開するのはホテルのロビー.カートにスーツケースを乗せてエルヴィラが行こうとするところをドン・ジョバンニが呼び止める.エルヴィラはファッション雑誌に出てくるようなしかもきりっとしたキャリアウーマン風.マセットとツェルリーナの結婚式も,カウンターバーのあるレストラン(?)で行われるし,出てくる人々も最新のファッションで着飾った人ばかりだ.舞踏会も,そのファッションショーと同じセットなので,ディスコパーティといった風情だ.
 2幕はその後なのですこし見慣れた感じがする.今度は話の内容で見せるという感じ.場面設定は1幕の流れなので,特にめぼしい感じはない.しかし爆笑なのは最後にドン・ジョバンニが石像のアンナの父(の霊)に連れて行かれた後だ.スクリーンが降りてくる.そこではTVニュースが.音楽は普通なのだがその画面は
 「さて,次のニュースです.デザイナーのドン・ジョバンニ氏が行方不明となりました・・・・・・.」
(disappearedの訳を、亡くなりましたとすべきかどうか。2013.10.12 注)
そして,ドン・ジョバンニ氏の生涯についてつづった追悼ドキュメント番組が流れ,新聞の一面の「DG has dissappeared」なとという,見出しが踊り,都会(プラハだと思う)の映像にかぶせて,デザイナー・ドン・ジョバンニ氏のプロモーション・ビデオみたいなのが流れて閉幕となる.

 元来,モーツアルトのころのオペラは,時代を風刺し,世情を描きながら最後にお客さんを泣かせるというような娯楽ものの系統だったはずだ.ところが,特に日本ではなのだが,いつしか「高い芸術性」「歴史的考証に基づいた伝統的な演出」などというものが幅を利かせるようになってしまった.もちろん,単に娯楽であるだけでは面白くないのだが,お勉強系のくそまじめなオタッキーなものではなかったはずだ.その点でもこの演出を多くの人に知って欲しいとおもう.

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