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プラハ市内の交通について(2000年9月のようす) [2000 in Praha]

 プラハは人口およそ120万人の都市である.もっとも,常に観光客でにぎわっており,都市別の年間観光客数もヨーロッパで第7位だとか.そんな街であるからか,歴史的に古くから栄えたからか,また共産主義時代の名残もあるのだろう,市内の交通はとても便利である.この歴史を知るために,市内交通博物館が作られている.これもとても興味深い.

 よそから来たお客さんにとってもっとも簡単に使えるのはメトロ(地下鉄)である.これだけの人口であるから,たくさんあるわけではないのだが,これで充分だろう.これが地下鉄の路線図とヴルタヴァ(モルダウ)河の関係である.
metro.jpg

駅名については,出来るだけ和訳して記した.ホレショヴィツェは登山口,ムーステクは小橋,デイヴィツカーは歴史的な場所というような意味だがよくわからないので原語をカタカナ表記にしてみた.ガイドブックなどでもこのようなカタカナ表記を用いているようだ.

メトロと中心部


 ムーステクからデイヴィツカーまでが4駅目でおよそ7分,フローレンツからホレショヴィツェも2駅目で5分ぐらいである.B線,およびA,C線の南の方は郊外まで延びていて,特にC線の走るプラハ4区は住宅地として開発された地域である.ヴルタヴァ河をくぐる形で走る路線が多いため,大変深いところを走っており,エスカレーターが長く,乗るまでに時間がかかるのが少々難点か.しかしこの地下鉄は実は川をくぐるために作ったと言うべき部分もあり,この深さについては我慢しなくてはならないと思う.時刻表ははっきりしていないが,「5分間隔」などと示してあり,プラットフォームには前の列車が出てから何分何秒経ちましたという掲示があるので,だいたいあとどれくらいで来るかわかる.

 上の図を見ると中央に3角形が出来ていることがわかる.この3角形は歩いてでも行ける程度の距離なので,環状線としての役割をになっているとは思えないが,中央を1つの駅にしなかったことは大いに評価できる.ムーステクから博物館までの間は,プラハの中心・ヴァーツラフ広場の真下を通っている.ムーステクから西に行けばナロドニ通りからヴルタヴァ河の畔に国民劇場(ナロドニ・ディヴァドロ),東に行けば共和国広場からフローレンツへとつながっている.共和国広場の近くには国内列車の発着するプラハ=マサリク駅.国際列車は中央駅かホレショヴィツェ駅を発着するものが多い.フローレンツには大きなバスターミナルがあり,国内・国際長距離バスはほとんどここから発着する.従って,この3角部分が交通の要衝と言って良い.

トラムとバスの役割


プラハ空港は,A線の終点デイヴィツカーからバスで約20分ほど西に行ったところにある.ここだけでなく,郊外にはバスもあちこちに,また頻繁に走っているが,その路線は基本的にはこうした中心部から離れた駅がターミナルになっている.私自身がよく知っているのはデイヴィツカーとホレショヴィツェだけだが,どちらからも多くのバスが走っている.これは一つの知恵であろう.すなわち,町の中心部にバスが入ってくると,排気ガスも多く環境や建物に良くない.中世のままの街並みを残していると言われるこの街プラハには,バスの排気ガスはあまり似つかわしくない.

 もう一つ,日本人観光客には難しいようだが,使えるようになるととても便利なのがトラム(路面電車)である.今はムーステク近辺からヴァーツラフ広場,共和国広場南側などはトラムは廃止されて歩行者専用となっている部分が多いが,それでも街中に縦横無尽にトラムが走っていて,それらは平日なら7分から10分間隔の運行.しかも同じようなところを走っている路線がたくさんあり,中心部ならほとんど待たずに乗ることが出来る.また停留所には時刻表の他に「ここに来る○番のトラムはこういう順で止まります.どれだけ時間がかかります」とすべて書いてあるため,大変わかりやすい.これはバスにも同じことが言える.たまたま手元にスキャナなどがないので,インターネットに路線図やそうした時刻表を載せることが出来ないのが残念だが,これになれてしまうと夏場などは,時間的にゆとりがあれば,深いところを通るメトロよりもトラムを使いたくなるというものである.実際,トラムも朝から遅くまで割合混んでいる.あまり詳しくは知らないが,上に述べたメトロの終点がバスターミナルというのは,実は元々はトラムの終点がバスターミナルであったようである.大きなビール工場がよく知られている,トラム16番の終点・ブラニーク駅前はバスターミナルになっている.地下鉄は3路線である.上下合わせて6方向に放射状に伸びていると見るならば,ざっと路線図で数えてみるだけで,トラムは15方向に放射状に伸びていると言えよう.そのすべての終点がバスターミナルになっているわけではないが,この充実ぶりは100年からの長い歴史を誇るすばらしいシステムであることがおわかりいただけるだろうか.
ヴルタヴァ河をどう渡るか,という大問題があるが,この件についてはこちらのページに改めて書くことにする.

 もう一つうれしいことに,トラムは書いてある時刻表通りに来る.日本人にとっては当たり前かも知れないが,世界的には希有なことであろう.

 トラムとバス,それぞれの路線図はこちら.少し見にくいが上の図と合わせてメトロ,トラム,バスの役割について見てもらいたい.

深夜の足


 繁華街がにぎわうかどうかの一つのポイントとして,夜遅くに帰る足があるかどうかがある.深夜・早朝については,メトロは朝5時頃から夜は午前0時頃まで.治安の問題もあるので夜中は追い出される.トラム,バスについては夜中は特別の路線が運行されており,主に繁華街から郊外へ,あちこち回って走る深夜路線が,だいたい20分から40分間隔で走っている.タクシーについての評判はあまり良くないこの街であるが,これがあることと,比較的治安が悪くないので,夜中まで町中で遊んでいても安く家まで帰ることが出来る.
深夜交通の路線図もこちら.とても便利なのがわかる.

料金制度


 各種ガイドブックなどで見ることが出来るが,市内交通(メトロ,トラム,バス)は共通券で乗ることが出来る.料金は大きな分け方をしたゾーン別時間制である.このほか市内には登山電車もあり,これもほぼ共通である.各種チケットの詳細は書かないが,同じゾーン内1時間券がKc12である.こちらの物価を考えても,これは安いと思う.乗り降りのときにいちいち改札はない.基本的に運転手は運転するだけである.自分で改札機に切符を入れて改札すると,乗った日付時刻が印字される仕組みである.バスやトラムの車内でチケットを買えないのは問題だが,一人一人改札していては時間がかかる.それがないから,ぱっと乗ってぱっと降りるだけなので,遅れることも少ない.ではどうやってチェックをするのか.時々私服の検札係が車内に乗り合わせていたり地下鉄構内にいたりして,突然職員証をみせ,検札を始める.チケットを持っていないと直ちに正規料金の15倍から25倍の罰金を取られ,出さないと身分証をチェックされる.券を持っていても,改札機を通していないと無効である.改札をしているひとを見ることが多くないので,旅行者などは,チケットの買い方がわからないこともあるかも知れないが,まあ無賃でも何とかなると思う人が多いようだが,さにあらず.人々の多くは定期券のようなものを持っているのである.定期券は1ヶ月,3ヶ月,1年とあり,月末から月初め,3,6,9,12月末にそれぞれ売り出される.ここには国民全員が持っている登録番号を書かなければならず,またその件のホルダーは写真付きである.従って他人がちょっと借りて,というわけには行かない.

 こうした制度は我が街・岡山をはじめ,日本ではどうなのだろうか.あまり上手く行かない気もする.たとえば検札係に捕まった人が,だってあの人もあの人もただ乗りだ,不公平だ,なんてまぜっかえしたり,逆に検査係に頼み込んでチャラにしてもらったり,そういうことになるだろう.欧米諸国と日本では「公平性」の概念が若干違う.別のところでも書いたが,国の機関の役人でさえ,「あの人にこういうことがあったんだ,自分も同じだ,認めろ」というような主張が受け入れられないこともある.またこの国のことは翌知らないが,検査係はその罰金の歩合制で給料が決まるところがあると聞いたことがある.そうだとすると,その検札係はかわいそうな商売だ.欧米なら「それは彼のビジネス」と割り切るだろうが,日本では「あの人,イヤな人」と,どういうわけか個人批判になってしまうような気がする.そうなったら検札係など誰もやりたがらないだろう.特に岡山のような地域社会では..

高齢者とパートナー


 これはヨーロッパ各国であることだが,犬を連れて乗ることが許されていることが多い.ベビーカーはもちろん,自転車も許されていることがある.またチェコ語が読めない私にははっきりしないが,老人パスのようなものがあると思われる.そこでかどうか,街には高齢者の方々がたくさんおられ,杖を突いていながら犬を連れたご婦人など,当たり前である.全体的にメトロもトラムもバスも運転は荒いと思うが,そうした高齢者の方々に座席を譲るというのはもう至極当たり前の光景で,あちこちで見ることが出来る.仕事をリタイヤした高齢者の方々が,何となく公園に,ちょっとした買い物に,と街中へどんどん出てこられることは,本当にうれしい.これが街の活気を物語っているような気がする.

車との関係


 人々の多くは車を持っているようだが,町中には駐車場が十分でない.特に昔の街並みをそのままとどめるために,ビルを壊して駐車場を建てるなどということがないためも一つの要因であろう.またこの国の人はビールが大変好きである.飲酒運転については厳しい国柄らしいので,それもあって町中に来るまで来るなどというのはバカげたことであるということになる.

 路面電車の良さについてやっと見直されてきた昨今である.地下鉄・バスと組み合わされて出来ているこの街の交通システムは,我がまち岡山も見習う点が多いと思う.
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