SSブログ

MITに学べ [教育について]

そりゃあそうだろうよ。

池上 彰
MITが「学部では最先端なんて教えない」理由 ~米国トップ大学の教養教育事情 MIT編その1
日経ビジネスオンライン ・池上彰の「学問のススメ」2013.3.7
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20130227/244292/
を読んだ。

世界の技術の最先端を切り開いているMIT。いわゆる工学の単科大学なのだが,そこで教養教育を重視し,学部生には「最新の技術など教えない」というのだ。

当然のことである。特に工学でいえば,5年もすれば技術は陳腐化する。学部生にそんなことを教えても意味が無いのだ。それよりも5年後,10年後に新しい状況に対応する力をつけさせることこそが教育の役目である。

ところがこの発想は日本の教育,特に大学に非常に薄い。池上氏も述べているように,日本では教養教育を端折って専門を学ばせるように大学を作り直してしまった。「即戦力」という言葉が跋扈している。しかし
「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」 (小泉信三 元慶應義塾大学塾長・今上天皇の教育係の言葉)
のである。

私が教員養成6年制に反対しているのも実はそこにも関係する。

数年前から,京都大学数理解析研究所で行われている教員養成に関連して数学者が集まって研究しようというプロジェクト研究に顔を出している。同研究所講究録などを参照されたし。
1657 数学教師に必要な数学能力形成に関する研究
1711 数学教師に必要な数学能力に関する研究
ここに参加している数学者たちは,「教員養成を6年制にする」ことに概ね賛成である人が多い。その理由は,2年間余計に数学を勉強し,いわゆる修士レベルの数学を考えた経験が教員として役に立つというのである。

このことには全くもって100%賛成である。

ところが現在考えられている「教員養成6年制」はこれと正反対である。特に今言われているのは,その6年目には1年間学校現場に行って実習をしろというものである。その実習では教師と同じ仕事をしろという。無給で,しかも学費を払って。

つまり,給料をもらう身になれば「即戦力」であれというのがその発想である。

これには強く反対する。

なぜなら,教師は教師として務めながら自らも学び,成長する存在だからである。若い教師は物を知らなかったり,方法を知らなかったりするが,その分子どもたちに近い若さがある。他方,年配の教師は子どもとの距離は多少離れるかも知れないが,その分経験がある。だから一概にどちらがいいとは言えない,むしろ教員にはこうした多様性が必要なのだ。

先日,ある県立高校の学校評議員会に出席した。その学校では経験の浅い教員,まだ教員採用試験に合格していない期限付き講師が多いのだが,それらを育成していく取り組みをしているという。素晴らしい。それが重要なのだ。

一方,私を含む数学者たちが「教員養成6年制」に賛成するとすれば,それはMITと同じ発想,すなわち数学を教える上での「教養」に相当する部分を深めることの意義を感じているからである。

即戦力を促成栽培するための教員養成6年制には強く反対する。2年間余計に学問をさせるならば良い。深い教養に裏付けされたものを教育現場へ。

教員養成系大学/学部は教員就職率についてガミガミ言われているが、採用試験の面接の練習に秀でた学生を養成して合格率を上げればいいのか。それが教育の質の向上なのか?

落ち着いて考えて欲しい。

nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(1) 

nice! 0

コメント 1

sobu

なんだ,同じことを言ってるよ。

東洋経済オンライン
宇宙を目指して海を渡る
小野 雅裕 :慶応義塾大学助教 
http://toyokeizai.net/category/041

そうだよ。こっちも世界標準でやってるんだよ。学生の評判は頗る悪いけどね(苦笑)
by sobu (2013-03-26 16:39) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

half millionあいつの解析学はヤバイ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。