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朝日新聞よ、これはまずいぜ [社会の問題について]

先に断っておく。

私は朝日新聞の長年の購読者である。

だがこれを見過ごさない力はあるつもりだ。

那覇地裁が、検察審査会による2度の議決によって強制起訴された件について無罪の判決を出した(2012.3.14)。これについて我が朝日新聞を見て目を疑った。記事を書き抜く。

今回の判決について、検察官役の指定弁護士は「市民感覚に基づく起訴だった点に踏み込んで判断してほしかった」と残念がったが、裁判所は有罪の証拠が足りないと判断し、無罪の結論を導いた。
(大阪本社版に基づく)

この指定弁護士は本当に「判決に対して」こんなことを言ったのだろうか。まさかそんなことはあり得ないと思って、他紙を順に見た。産経、読売、日経にはこのことについての言及は見つからなかった。毎日には次のように書かれてあった。

強制起訴制度を巡って指定弁護士は公判で「国民感情や処罰感情からかけ離れない判断が求められている」と強調したが、判決で強制起訴制度への言及はなかった。


これが正しいのだろうと思う。そもそも検察が有罪に出来そうもないから起訴しなかったわけで、指定弁護士は最初から敗戦覚悟でこの仕事を始めたのだ。その状況において、公判内でこのような主張をすることは当然であり、刑事裁判においては当然の戦術だろう。しかし指定弁護士はあくまでもその「役目」で仕事をしているわけで、役目のために忠実に、可能なことを一生懸命やったと思われるのだ。それに対して裁判所側は当然、普通に裁判をする。

およそ弁護士とはそういう商売なのではないだろうか。依頼人の利益を一番に考える。それは刑事裁判の国選弁護人であったとしても使命は同じだ。山口県光市の母子殺人事件の被告弁護人に対して、ある弁護士(そののち知事になって今は市長だ)がテレビで被告弁護人への懲戒請求を呼びかけた件(2007年)など、そもそも自分の仕事のあるべき姿を忘れた最悪の事例である。

だからこの毎日の記事は妥当だし信じられるものだ。しかし朝日の記事は何だろう。指定弁護士が
これは市民感情からしてクロなのだから、有罪にしてほしかった

とでも言っているかのごとく取れる。

まさか。それじゃ魔女狩りじゃないか。みんなが言っているから有罪にしろ?法治国家としてそんなことが許されるわけもない。もし本当にそんなことを言ったのなら、それこそが懲戒請求すべきことではないか?

検察が裏でごそごそして決着を図ることへの批判はわからなくはない。だからこの強制起訴制度ができた。それに則って一生懸命仕事をした指定弁護士に対してこういうことをいうのか?

小沢一郎氏に対する政治資金規正法関連の裁判でも同じように強制起訴制度の下で検察役を務めている指定弁護士に対して、それを個人的に攻撃するような言説をよく見るのだけれど、それもまずい。彼らは役目に忠実に仕事をしている。個人的な感情・判断はさておきだ。

改めて言う。私は朝日新聞の長年の購読者だ。だがこんな記事を書いているとは情けない。

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コメント 2

sobu

そういえば、「リテラシーがどうしたこうした」という記事について、私のことを「こいつばかじゃね?」とこき下ろしている記事を見たが、その人のいうリテラシーってのは私とはずいぶん違う話をしているようだ。

私のいうメディアリテラシーってのはこういうのを見過ごさないことだと思う。
by sobu (2012-03-16 12:43) 

sobu

で、小沢一郎氏への判決が出た。朝日新聞ではないが、今度は弘中弁護士へのバッシング。本当に困ったことだ。弁護士は依頼人の立場に立つのが仕事だ。もちろん検察官役の指定弁護士に対しても、同じことが起きるだろう。

あまりにもレベルが低い。
by sobu (2012-04-27 14:08) 

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